2025年8月28日木曜日

下村万実さんの『闇に願いを』が「10代がえらぶ海外文学大賞」にノミネート!

本日は以前OSTECに参加されていた下村万実さんの訳書「闇に願いを」の紹介です。

「10代がえらぶ海外文学大賞」のノミネート作に、下村さんの「闇に願いを」が選ばれたとのことです✨

『闇に願いを』 - 株式会社 静山社

https://www.sayzansha.com/book/b642831.html

下村さん、おめでとうございます✨OSTECメンバーはみんなとても誇らしく思っており応援しております。

新聞記事によりますと、大賞作を選ぶ投票は、9月1日~26日に公式サイトで行われるとのことです。

10代の人なら、だれでもこの投票に参加できるそうです。平野セミナーに参加していたメンバーは残念ながら10代を少し前に過ぎたメンバーばかりでした…。

10代のお知り合いがいらっしゃる方、ぜひとも投票に参加を呼びかけてください。

どうぞよろしくお願いいたします。

下村さんご本人からも以下のようにメッセージを頂戴しております。


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ご無沙汰しております。下村万実です。

この度は、共訳書『闇に願いを』に温かいご支援をいただき、誠にありがとうございます。

皆様からのご声援、大変うれしく、心強く思っております。


ご紹介いただいたように、下記の「10代がえらぶ海外文学大賞」の公式サイトで、

9月1日(月)~9月26日(金)に2次(最終)投票が行われますので、

たくさんの10代の方に参加していただきたいと思っています。

(また、今年は終わってしまいましたが、1次投票は誰でも参加できますので、

もしよろしければ、来年以降、10代を少し前に過ぎてしまった方々もご参加くださいね。)


「10代がえらぶ海外文学大賞」

https://www.10daikaigaibungaku.com/


「10代がえらぶ~」について、少し説明させていただくと、

この文学賞は、今年(2025年)新設されたばかりの文学賞で、

第1回目は、去年(2024年)日本で刊行された10代が主人公の海外(翻訳)文学作品を対象にしています。

若い人が読書をしない理由の一つに「読みたい本がなかった」というのがあるらしく、

それなら10代のための面白い海外文学を紹介しましょう!という主旨で創設された賞のようです。


ちょうど昨日(8/18)、「10代が~」関連のオンラインイベントがありました。

選考委員7名が7冊のノミネート作品について、各自1冊ずつ紹介しています。

粒ぞろいの作品が集まっていて、10代じゃなくても読みごたえがあると思います。

そして、10代のみなさんには、本選びの参考にしてもらえればありがたいです。


「10代がえらぶ海外文学大賞特別トークライブ」

https://www.youtube.com/watch?v=-3r4Xqv9itE


また、簡単にではありますが、自分でも『闇に願いを』の紹介文を書きました。

ご興味のある方は、お読みいただければ幸いです。


今後とも、「10代がえらぶ海外文学大賞」と辻村万実(ペンネームです)をよろしくお願いいたします!


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(下村さんによる『闇に願いを』の紹介文に続きます Read more ... をクリック)

2025年8月21日木曜日

2025年8月 平野セミナー 量子コンピュータ (2)

2025年8月の 平野セミナーのお題は「量子コンピュータ」の2回目でした。

「量子コンピュータ (quantum computer)」と聞くと、あたかも量子がコンピュータの中を飛び回っているのかな?と思うような名称ですが、実際にはそうではありません。

古典物理学とは異なる、極小世界での物理法則は、常識とは異なる量子力学に基づいています。

量子コンピュータとは、その量子力学のなかの「重ね合わせ (superposition)」と呼ばれる原理を計算に応用したコンピュータのことです。

古典的なコンピュータは bit、0か1、どちらかの状態を使って計算を行いますが、量子コンピュータでは qubit、0と1の状態を同時に持った状態で計算を行います。

量子コンピュータではこの原理を利用して、特定の分野においては計算の高速化が期待できるそうです。

8月は量子コンピュータの2回目でしたが、お盆にも関わらず多くの課題提出をいただき、活発な議論が展開されました。

以下の議論が印象に残った方も多かったかと思います。

  • 日本語「名前からすると…」の英訳 (You might ... / evokes)
  • 日本語「そういうわけではない」の英訳 (that is not the case / that is false / that is what it is)
  • 比較表現 (outpace vs excel vs beat)、compared to
  • which ..., A or B とするか、そもそも which を使わない形にするか
  • 3種類の総称表現の違い (The quantum computer, Quantum computers, A quantum computer)
  • use / utilizeの違い

とくに午後の部で出た総称表現の質問と、先生のわかりやすい解説には納得された方も多かったようです。

量子コンピュータは私には馴染みのない分野でしたが、2ヶ月間の講義ですっかり量子コンピュータのニュースに注意が行くようになりました。

自分の知らない世界について知るきっかけになるのも、OSTECに参加してよかったと思う部分の一つですね。

次回は9月18日(土)の開催になります。

2025年7月19日土曜日

2025年7月 平野セミナー 海洋酸性化 (2)

7月の平野セミナーでは、まず前半で6月課題の「海洋酸性化」の続きを取り上げました。

今回は藤田のノートから、研究会で印象に残ったディスカッションポイントを紹介します。


“転換期”は英語で何と言うか? 

watershed はポジティブ・ネガティブ両方の意味合いがある。
あるいは turning point よりも、tipping point という表現が海洋酸性化の文脈では合う。
tipping point は「崩壊」や「危機的状況」を暗示する。
大きな転換点、臨界点に達して、あともどりできない場合に使うため、今回の課題には適した表現。

“have already faced” vs “have already been facing”

「already」が付くと完了形の意味で「終わった経験」を示唆することがあるため、継続的な状況を表すには have already been facing が適切。動作動詞であれば進行形も可だが、状態動詞は稀。

“exceed” の類義語

「outpace」=速度・勢いで上回る
「outweigh」=重要性・影響で優位になる
文脈に合わせて使い分けると説得力が増すようです。

open/closed vs open/close

open / closed は形容詞(状態)
open / close は動詞(行為)。
「店は開いている」なら open、 「店舗を閉める」なら close と使い分ける。

coral vs corals

coral: 珊瑚礁、珊瑚という素材
corals: 珊瑚虫

Clear vs Conciseの重要性

clearを犠牲にしてまで、conciseにする必要はない。
conciseにすることでclearさが失われるなら、オーソドックスな英文にしていく。

Not only A but also B の情報の順番

情報の登場順番としては A→B が自然なので、Bが新情報になるほうが自然。
but also Bの位置に前に言っていたことを位置させると話が戻ってしまって読者が混乱しやすい。
そういった局面では not only ... but also を諦めて and にすると話が見えやすくなる。

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6月、7月と2ヶ月にわたって海洋酸性化の課題が取り上げられましたが、英文和訳の際の難所、それを乗り切るコツ満載の素晴らしい講義でした。

平野先生いつもありがとうございます。

2025年6月21日土曜日

2025年6月 平野セミナー 海洋酸性化 (1)

6月の平野セミナーは「海洋酸性化」に関するエッセイの和訳課題でした。

今回はその中から午前の課題文に関しての議論から、ディスカッションとなったポイント、印象に残った点を藤田のノートから抜粋して紹介します。

午前の課題文は、大気中に吐き出される二酸化炭素が地球温暖化の原因である、といった主旨の文章でした。


“emissions” vs “emission” vs "emitted"

- emission: [U] 排出の「アクション」を表している

- emissions: 排出物

今回の課題では、emission という「アクション」が温暖化を引き起こしているのではなく、「排出物」が温暖化を引き起こしているので、emissions のほうが文脈適切。

あるいは、名詞をそもそも使わず、emitted とすると加算不可算が関係ないので、分詞の emitted を使うという対象法も良い。


"cause" vs "a cause of"

動詞 cause を使うと文章がすっきりするが、一要因であるというニュアンスをこめたい場合は、不定冠詞+名詞を使った "a caude of" を使ったほうがよりニュアンスが出る。


― (dash)  はどういう時に使える記号か

参加者からの質問「ダッシュはどういう時に使うと適切なものなのでしょうか?」に対して、面白い説明がありました。

「コロンってどうやって使うんだっけ?」「セミコロンって」どうやって使うんだっけ?なんて時にはパンクチュエーションの代用として、ダッシュにしておけば間違いない…という考え方があるそうです。

たとえば、有名なライティングの教科書 "The Elements of Style" のパロディ "The Elephants of Style" には、“When in doubt, dash it all” という説明があるそうです。素晴らしく easy to understand な説明ですね。

また、帰宅後に本家 "The Elements of Style (4th edition)" を見て確認してみると、 

"Use a dash to set off an abrupt break or interruption and to announce a long appositive or summary

という説明がありました。これはこれで辞書的で clearな 説明です。

こうして多角的に見ることで、ダッシュの性格が見えてくるような気がした、そんな時間でした。こうしたこぼれ話もOSTECに参加して面白いな思うところですね!


The Elephants of Style は現在もAmazonで購入可能なようですので、ご興味がある方は一度書店等で確認されてみてください。

Bill Walsh: The Elephants of Style: A Trunkload of Tips on the Big Issues and Gray Areas of Contemporary American English

https://amzn.asia/d/iAqUiLU

2025年5月17日土曜日

2025年5月 平野セミナー 安全に関する表示 (ANSIとOSHA)

 5月の平野セミナーでは、安全に関する表示 (ANSIとOSHA) が取り上げられました。

- ANSI:米国国家規格協会(ANSI)は1918年設立の非営利組織で、工業分野の標準化を推進する団体。
- OSHA:米国労働省職業安全衛生局(OSHA)。

今回の講義は、安全に関する ANSI Z535 Standards と OSHA 1910.145 Rules を見比べ、それぞれのサインの定義の違いを比較するというテーマでの講義になりました。

この講義の最後、1時間ほどを使用してグループワークの演習がありました。

グループワークでは参加者が4人ずつ程度、4つのグループに分けられました。

課題は、ある飛行機の操縦席にある実際の英文をわかりやすくリライトするという課題で、最終的にはそれぞれのグループで1つの英文を作成し、先生に添削してもらうというものでした。

グループによって回答の文頭を不定詞で始めたり、あるいは接続詞で始めたり、はたまた全体的に大文字多めで強調してみたりと、有益なディスカッションがあったことがうかがえる回答となりました。


基本的には提出課題への個人添削がメインの平野セミナーですが、時々行われるグループワークも、それぞれの考え方や、好み、さらにそれぞれの専門の知識などに触れられるので、楽しい時間です。

今回取り上げられたANSIの安全に関する表示については、Wikipediaにも定義がありましたので、ご興味がある方はこちらをご覧ください。
ANSI Z535 - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/ANSI_Z535

2025年2月15日土曜日

2025年2月 平野セミナー 高校教科「情報I」で学ぶ情報システム分野

 2月の平野セミナーでは、高校の「情報」科目で習う知識を問う試験問題の問題文を英訳する、という面白い課題が取り扱われました。

今年から大学入学共通テストでも「情報I」が出題されるようになった、というニュースを耳にされた方もいるかもしれません。

Wikipedia で教科としての「情報」を調べてみますと、大きくは3つの分野を専門としているようで、今回は情報システム分野からの出題となりました。

 

-  基礎的科目 

-  情報システム分野

- コンテンツ分野

*情報 (教科)   より引用

セミナーの講義では、インターネットのデジタル署名と、IPアドレス(v6)についての英訳が議論のポイントとなりました。

IT系で特徴的に使われる単語や表現というのは確かにありますので、技術的にもナチュラルな言い回しが多く紹介された回となりました。


2025年2月1日土曜日

2月の研究会の日程:

  • G研は2/1 (日) に [午前/午後] KOKO PLAZA 701号室で開催します。
  • 平野セミナーは2/15 (土)に [午前/午後] KOKO PLAZA 300号室で開催します。

見学をご希望の方は、[お問い合わせ] のページから幹事にメールでご連絡ください。

2025年1月21日火曜日

2025年1月OSTEC平野セミナー(ますますOSTECに参加したくなるの巻)

 OSTEC(大阪工業英語研究会)のセミナー(毎月第3土曜日、@新大阪)に参加しました。

いつもは課題文を提出して平野先生に添削していただくことが多いのですが、今回はお正月の特別会としてテクニカルライティングとはというお話を先生がしてくださいました。
英文テクニカルライティングの際に気を配る3つの要素として、よく(?)言われるのが3C(clear, concise, correct)です。今回の講義では、この3Cを目標にするだけでなく、coherenceという考え方も加えて英文をよくしていく方法について講師の平野先生にヒントをいただきました。
写真は、coherenceに欠ける文章をHighly coherentな文章に変化させていく思考について説明いただいた例文です。

Highly coherentな文章を読むと、OSTECに参加したくなります!
講義の最後は、教わったことに気を付けながらグループワークで英作文に取り組みました。グループワークでは他の参加者の方々が英作の際に気をつけている点など、普段は聞けない話も聞けてとても勉強になります。
そして、セミナーの後は、新年会🍺。平野先生を囲んで、OBやG研(OSTECのもう1つのグループで英文を和訳する活動されています)の皆さんともご一緒でき、楽しいひと時でした(残念ながら楽しすぎて写真無し)。よくしゃべりました(森山)