平野 信輔
こんにちは、講師の平野です。今回は、「テクニカルライティングとはなんぞや?」というお話を少し。
テクニカルライティングって何でしょう?
単純な話、「技術関連の文を書くこと」や「論理的な説明を文字ですること」はすべてテクニカルライティングです。「Wi-Fiルータが新しくなるから、社員向けに接続の仕方をまとめておいて」とか、「来月発売の新型の特徴、セールスが使いやすいように箇条書きにまとめておいて」とか、技術関連の情報伝達であればみんなテクニカルライティングです。広い意味では、駅からオフィスまでの道順の説明だって、テクニカルライティングです。
別に、守らなければならないルールがあるわけではありません。「こういう風に書くからテクニカルライティングだ」「このルールを知らないと恥ずかしい」というような、「テクニカルライティング道」みたいなものは存在しません。技術情報を扱った文や、論理的な説明である限り、どんな書き方をしてもテクニカルライティングです。
でも、上手下手はあります。伝えたいことが伝わらないのは困ります。伝わるのに時間がかかるのも困ります。間違ったことが伝わるのは、一番困ります。「どうやったら上手く伝わるか」を考えるところに、人が英文を書く面白さがあり、技があります。
例を見てみましょう。ありがちな和文と、ありがちな英訳です。
この場所での裸火の使用は危険ですので避けてください。
Use of open flames in this place should be avoided because it is dangerous.
和文も英文も、文章として成立してはいますが、情報伝達の効率は良くありません。情報の整理が十分でなく、全体に回りくどい表現になっています。
また、英文では should が使われていることも問題です。これでは「禁止」ではなく「できれば避けて」ぐらいのニュアンスになってしまい、正しく情報を伝えているとはいえません。
無駄を削除し、伝えるべきことをシンプルな形で伝えると、次のようになります。
ここでは裸火は禁止です。
Do not use open flames here.
あるいは、注意標識の形を取り、次のようにしてもよいでしょう。
裸火禁止
No open flames
別の例を見てみましょう。
情報パネルの右下隅の Error code 欄に表示されているエラー・コードを確認してください。
Check the error code displayed in the Error code field in the bottom right corner of the information panel.
この英文、正確な訳ではありますが、和文と違って流れが悪いように感じませんでしょうか。原因は、和文英訳時によく起こる、語順の逆転です。
和文では、「情報パネル→右下隅→Error code欄→エラー・コード」というように、広いところから狭いところへと場所を示す言葉が順序良く並んでいます。「エラー・コードがどこにあるのか」を探すときの、視線の動きそのままの語順になっているのです。
英文では、これら4つの項目が逆の順序で並んでいます。読者は文を一度最後まで読み、その後で逆にたどって目的の情報を見つけることになります。読者に面倒を強いてしまうわけです。
和文と同様の語順を再現できれば、より使いやすい英文になります。次のように前置詞や動詞を工夫して表現するのも、一つの技です。
On the information panel, in the bottom right corner, find the Error code field and check the error code.
さらにちょっと仕上げ。「Error code欄」と「エラー・コード」は、日本語ではアルファベットとカタカナで表記が分けられているので、一文中に両方あっても違和感は少ないです。英語ではどちらもアルファベットですから、情報が無駄に繰り返されている感じが強くなります。次のようにまとめてしまった方がスッキリします。
On the information panel, in the bottom right corner, check the error code.
ただ訳すのではなく、情報を整理して、分かりやすい英語で表現しなおす。それが、上手なテクニカルライティングです。大事なのは、読み手の負担を減らし、情報を素早く正しく伝えるように心を配ること。上手なテクニカルライティングは、人に優しいライティングなのです。大阪工業英語研究会OSTECは、それを共に考え、学ぶ場です。。
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